美容室の開業することをモチベーションに、仕事をしている美容師も少なくないと思います。
確かに美容室を開業すれば、収入がアップして自由な時間も増やすことができるでしょう。
ところが独立をすれば失敗はつきものです。
独立する前に失敗談を知っておくと、予め対策ができるので、これから紹介する内容を参考に、開業の準備を進めておいてください。
監修者

西脇 敬久
株式会社DAM代表取締役。MBA、公認会計士、税理士の資格を所有。美容業界に特化した公認会計士として、美容院の顧客を多数抱える。美容院経営で必要な数字を明確にし、”誰でもわかる会計の見える化”で18%の利益率を目指す。美容院の会計に特化したセミナー講師としても活動中。
当社は美容業界に特化した会計サービスを提供。数字を活用し、人材流出を防ぎながら、18%の利益率を目指す経営支援を行います。会計業務にとどまらず、経営改善やスタッフ定着率向上のアドバイスを通じて、美容室経営の安定と成長をトータルサポートいたします。
美容師が独立して美容室を開業したら失敗してしまう最大の理由は”経営の勉強をしていない”
美容師の技術はたくさん勉強してのに経営の勉強をぜずに独立する人が多すぎる

いろいろな美容師オーナーを見てきましたが、失敗する理由のほとんどが”なんとくなくで独立”してしまったことが多いですね。
美容技術の習得や練習に力を入れることは大切ですが、美容室経営についての知識が不足していると、経営者として成功するのは難しいです。
実際に独立をする際に必要な知識は多くあります。
経営者として身につけておくべき知識
- 財務税務
- 労務
- 人事
- マーケティング
- ブランディング など
会社が成長し、規模が大きくなれば、これらの分野ごとに専門の担当者を配置することができるかもしれませんが、初期段階ではそうはいきません。
すべての業務を経営者自身が担う必要があるため、幅広い知識とスキルを身につけることが求められます。



美容師になれば、誰でも自分の美容室を開業するという夢を持つ人は少なくないと思います。
ただ、技術力だけで独立してしまうのは失敗する典型例ではあるので慎重になってほしいですね。
美容室の独立の失敗をデータから見てみる
過当競争のなか、淘汰も進む。廃業率は1年以内が6割、3年以内が9割で、年間2万軒が入れかわるともいわれる。厚労省の「生活衛生関係営業経営実態調査」によると、経営上の問題として8割が「客数の減少」を挙げているのだ。
3年以内で9割の美容室が廃業。これが現実です。
美容業界は競争が激しいため、独立をする際は技術力だけではなく経営スキルや運なども含めて複合的な要素が関わってきます。
余談
美容業界に特化した会計サービスとして数多くの美容師オーナーと関わることがあります。
もちろん中には独立に失敗した美容師オーナーの話もたくさん聞いてきました。
そんな中、失敗の理由で1番多いこと。
経営の勉強をしてこなかった
高い技術力さえあれば、独立した後のほうが収入も高くなると思っていないでしょうか?



この考えを捨てておかなければ、独立後に失敗する可能性が高いです、、、
独立して美容室を開業した時のよくある失敗談
- 経営の勉強をしないで独立した
- コンセプトがハッキリしていない
- 資金不足をして失敗
- 共同経営での失敗
- 集客力が弱すぎて失敗
- 求人を出しても人手不足
- 組織作りで失敗
美容室を開業して失敗するような人は、次の内容のどれかに当てはまっているはずです。



この後は具体的に、美容室開業後の失敗談も含めて紹介していきます。
ぜひ参考にしてください!
経営の勉強をしないで独立した
プレイヤーとして成功したからといって、経営者として成功するとは限らない
美容師として働いている間は、技術力と接客力の向上でお客様満足度を上げることが大切です。
しかし、美容室を開業したとなれば話は違います。
経営者に必要なこと
- 経理や事務などの数字を知識
- 経営に必要な法律の知識
- 顧客を増やすためのマーケティングの知識
- 美容師を育てるマネジメントの知識
経営者になるためには、このように様々な知識が必要になります。
どれか1つでも欠けてしまうと経営を続けること自体が難しくなり、最悪の場合、廃業してしまう人も少なくありません。



プレイヤーから経営者に変わることで、必要になるスキルも変わってきます。
美容師のマネジメントに失敗してしまい、離職が続いたサロンの例をご紹介します。
市の中心部にある美容室です。10年前まで5人いた美容師が2人に減りました。
首都圏の美容専門学校に求人を出すだけでは採用できないため、北海道から沖縄県まで全国を対象に求人を掲載。それでも採用につながらず、出産などで辞めた美容師の穴を補充することができません。
予約の電話が鳴るたびに、美容師が人手不足で希望する日時で予約を受けることができないことを説明し、「すいません」と電話越しに何度も頭を下げていました。
このように、人手が足りずに売上が低迷している美容室も少なくありません。
美容室を経営する上で、お客様だけでなく、美容師への配慮も必要になります。
幅広い知識が必要になると覚えておきましょう。
コンセプトが曖昧でハッキリしていない
コンセプトがないと差別化が難しく優位性を保てない
美容室のコンセプトがハッキリしていないと、顧客が離れやすくなってしまうので注意しましょう。
コンセプトが決まっていない美容室は、お客様が他の美容室と何が違うのかわからなくなり、価格競争に巻き込まれてしまいます。
現在では物価の高騰が著しく、低価格サロンの需要が高まっており、資金力のある低価格の大手チェーン店に顧客を奪われてしまうかもしれません。
実際に美容室の倒産が増えています。
経済活動が平時に戻った2023年に入ると円安が加速し、空前の物価高、人手不足に見舞われ31件と一気に増勢に転じ、2024年は初めて40件を超えた。
人手不足と人件費の上昇で美容師の確保も難しくなるなか、水道・光熱費や美容資材の価格も上昇し、カット料金の値上げが避けられない状況にある。実質賃金のマイナスが続くなか、値上げは顧客の足が遠のく要因になりかねず、美容室の倒産はしばらく増勢が続く可能性が高い。
引用:東京商工リサーチ
コンセプトがハッキリした美容室だと、顧客がファン化し、価格を上げても失客しにくいお店作りができるようになります。
ターゲットを明確にし、魅力的な美容室を作れるようになっておきましょう。
資金不足をして失敗
開業・開業後にかかる費用のイメージがつかなくて使い過ぎてしまう
美容室を開業する際に運転資金が不足してしまうのは、よくある失敗の一つです。
自分のお店を持つことに夢中になり、「おしゃれで素敵な内装にしたい!」という気持ちから、開業資金に多くのお金をかけてしまうことがあります。
その結果、オープン時に運転資金が十分に確保できていない状態になってしまうことがあるのです。
実際のところ、開業初日から多くの顧客が訪れる保証はありません。
また、自分が体調を崩して休業せざるを得なくなったり、美容機器が故障したりと、不測の事態はいつでも起こり得ます。
さらに、集客やスタッフの採用を強化するために、予想以上の経費がかかることもあります。



美容室経営は家賃、給料、光熱費、人件費、返済など様々な費用が発生します。
なんとなくで経営すると、資金繰りが悪くなるので注意が必要です。
共同経営での失敗
経営方針の違いから、ほとんどが失敗に終わる
美容師時代に仲良くなった人と共同経営をして、美容室を開業させようと考えている人もいるかと思います。
確かに同じ目標や夢を持ってきた仲間。2人で切磋琢磨していきたい気持ちもわかります。
ただ、経営となると話は変わってきます。
共同経営をした場合、どちらか一方が不満を感じ、思ったように経営方針が決まらないといった事例も少なくありません。
両方が「自分の店」と思っているからこそ何かの意思決定で片方の意見が通らないことが多くなり、最終的には不満が爆発して、お互いが別々の道に進んだという話もよく耳にします。
確かに共同経営をすると、役割分担ができて効率よく経営はできますが、トラブルが起きやすいのが共同経営の大きなデメリットです。



共同経営で美容室をしていくには、メリットもあれば、デメリットもあるということだけは忘れないでください。
集客力が弱すぎて失敗
集客ができず、売上が上がらないため疲弊していく
美容室を経営し続けるためには、新規顧客を増やしていく努力が必要になります。
実際の集客手段としても多岐に渡り、例を出すと。
- SNS活用・・・Instagram、TikTok、Facebook、Twitterでのビジュアルコンテンツや動画の投稿
- ホームページ・ブログ運営・・・SEO対策と定期的なコンテンツ更新
- Googleマイビジネス・・・口コミ管理と情報の最新化
- オンライン広告・・・Google広告、Facebook広告、Instagram広告
- メールマーケティング・・・メールマガジンの配信やキャンペーン情報の送信
- チラシ配布・・・地域ターゲティング、新聞折り込み
- 看板広告・・・店舗前の立て看板や道路沿いの大型看板
- お友達紹介キャンペーン・・・既存顧客を介して新規顧客を紹介
- 地元イベントへの参加・・・ローカルイベントでのブース出展や無料体験
- フリーペーパー掲載・・・地域密着型のフリーペーパーや雑誌広告
- クーポン提供・・・地元商店街や近隣の店舗と連携しての割引クーポン提供
オンライン、オフラインと色々と手段はありますが、サロンの特色によって何がいいかは変わります。



色々と試してみて、どんな手段があっているかを知ってほしいです!
集客が成功しているサロンの特徴もあるので合わせて紹介しますね!
集客力が成功しているサロンの特徴
- 強みとコンセプトの明確化
- ターゲット客層の設定
- リピーターの割合が高く、新規集客が少なくてもいい
- ポータルサイトとは別の集客手段を持っている
- 外部のマーケティング担当を入れている
集客のためには立地も大切
女性が初回来店時にサロン選びで重要視したポイントは「自宅から近い」(34.6%)、「料金がリーズナブル」(31.1%)が3割以上。
10~30代では「ネットの口コミが良い」、40~60代は「自宅から近い」ことを最も重要視している。
このように自宅から近い美容室を選ぶ人が多く、店舗選びがいかに重要かわかるでしょう。
駅から近いなど、交通の便を気にする人も14.6%いるように、立地で美容室を選んでいる人は少なくありません。
とはいえ、ターゲットに合わせた集客方法を知っていれば、美容室の店舗の場所を気にしなくても、お客様は来店してくれます。



集客で大切なことはたくさんありますが、立地選びもポイントの1つです!
求人を出しても人手不足
美容室を開業して最初に直面する問題の一つが、スタッフの確保です。
特に競合店が多い地域では、人材の奪い合いが激しくなり、条件面での差別化が難しくなっています。
どのサロンでも給与や福利厚生の充実が進んでおり、働くサロンの比較が難しいです。
なので、条件面ではないのサロンの思い、キャリアアップの支援、働きやすい環境など、あなたのサロンで働く魅力を伝える必要があります。



簡単に人が集まる!と思ってサロン経営すると痛い目に遭います。
実際に人手不足でサロンを廃業される方は多いです。
組織作りで失敗
美容室の開業において、組織作りも重要な要素です。
多くのオーナーが犯す失敗の一つは、スタッフの役割分担や業務フローを明確にしないまま運営を始めてしまうことです。
これにより、業務の滞りやスタッフ間のトラブルが発生しやすくなります。
また、オーナー自身が技術職と経営職の両方を兼任する場合、どちらも中途半端になりがちです。
このため、オーナーは経営に専念し、技術に関しては信頼できるスタッフに任せるなど、組織の役割分担を明確にすることが求められます。
さらに、スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にするための取り組みも重要です。
例えば、定期的なミーティングを開催し、意見交換や情報共有を行うことで、組織の一体感を醸成することができます。
このように、求人や組織作りにおける失敗は、経営に大きな影響を与える可能性があります。
美容室の成功には、経営戦略と人材戦略をバランス良く取り入れることが不可欠です。
美容室を独立した後に失敗しないためのポイント
- 事前準備は必須
- メインターゲットに合わせた集客方法を見つける
- 人材が流出しにくい仕組みづくりをしておく
- 顧客管理とリピート施策の強化
- 数字を経営に活かすための財務状況の管理をする
独立をして美容室を開業したいと思っている美容師は、これから紹介するポイントを意識して準備を進めていきましょう。
これらのポイントを意識すれば、大きな失敗はカバーできるようになります。



それぞれ具体的に独立後の準備の方法としてまとめてあるので、参考にしてみてください。
事前準備は必須
- 店舗選び
- コンセプト
- 差別化によるメニューづくり
美容室の開業で大事になるのが、事前準備です。
最低でも上記の3つを決めて、開業しても売上が安定しやすい美容室にしましょう。
例えば、店舗選びが重要になるので、事前に物件選びは慎重にしてください。
上記で紹介したように、自宅から近い美容室はお客様に好まれます。
住宅街や交通の便がいい場所に美容室を開業させると、来店してもらいやすくなるでしょう。
顧客がファン化しやすいコンセプト作りも重要になります。
コンセプトを作るためには、まず市場調査を行いましょう。
そして他の美容室にはない差別化できるものに仕上げておくと、ターゲットも絞り込みやすくなります。
「トレンドヘアーを毎月通える価格で提供」
超都心でありながら、常にお客様にとっての適正価格でサービスを提供することにこだわり続けると共に、めまぐるしく変化する世の中のトレンドを素早くキャッチし、追求し続けるサロンです。
実績のある大手美容室でも、このようにコンセプトがハッキリ決まっており、公式サイトでも公表されています。
それだけコンセプト作りが大事なのがわかるでしょう。
最後にメニューづくりです。
上記のコンセプトに合わせて、独自のメニューを作ることができれば、さらにお客様から選ばれやすい美容室になります。
メインターゲットに合わせた集客方法を見つける
美容室を開業する前の準備段階で、コンセプトを作ったと思いますが、その時に来店するお客様もターゲットも決めておきましょう。
例えば、上記で紹介した大手美容室のような、トレンドを追い求める美容室のターゲットは若い人やおしゃれが好きな人です。
そんな人たちをターゲットとしているのなら、集客方法が決めやすくなります。
若い人なら多くがスマホを使っているので、集客方法は自ずとSNSを使った集客をイメージできるでしょう。
Instagramで髪型などを掲載して、ファンを獲得していけば、集客がしやすくなります。
また、スマホを持っている多くの人がLINEを使っているので、LINE公式アカウントを使うのもおすすめです。
人材が流出しにくい仕組みづくりをしておく
もともと美容師は3年以内の離職率が高いとされていましたが、厚生労働省のデータでも、その高い数値が確認されています。
調査産業計:43%
生活関連サービス業、娯楽業:59%
このように美容業での離職率は、令和2年現在で59%と高いのですが、少しずつ数値が上がっていることがわかると思います。
美容室の経営を続ける上で、人材流出を防ぐ努力は必須になっているわけです。
美容師が仕事を辞める原因として有名なものが、給料の安さと拘束時間の長さではないでしょうか?
これらを改善できるように、仕組みをしっかり作ることが人材流失を防ぐ第一歩です。
それでも、出産などの環境を理由に、仕事を辞めてしまう美容師がいることは事実。
辞めてしまった後もしっかり営業が続けられるように、リスク管理ができていれば、より売上が安定して経営が続けやすくなります。
顧客管理とリピート施策の強化
美容室を経営していく上で大事になるのが、顧客管理とリピート施策です。
美容室での顧客管理は、来店履歴だけでなく、髪の悩みや好みのスタイルなどの利用状況も管理しておくと、経営に役立てることができます。
その情報に合わせて、リピート施策を行っていきましょう。
ターゲットに合わせたメニュー開発や、DMを使ったクーポンなどがよくある施策です。
どちらもよくわからないのなら、顧客管理専用のツールを使ってみましょう。
電子カルテとして表示されるので顧客管理がしやすくなる上に、クーポンなどを使ったDMまで送信する機能などもあるので、リピート施策もしやすくなっておすすめです。
ただし、月額費用などのコストがかかってくるので、お金をかけたくない時はExcelなどのコストのかからないツールを使いましょう。
自作する必要があるので、リピート施策に必要なものが何なのか、予め調べておく必要はあります。
数字を経営に活かすための財務状況の管理をする
美容室の経営には、必ずといっていいほど数字を管理しなければいけません。
毎月の売上をチェックして客単価を計算するなど、営業の実績を分析して、その後の経営に活かすためです。
中には売上が高くなっても、収益が少なくて困ってしまうこともあるでしょう。
そんな時は、経費の無駄遣いが増えている可能性があります。
在庫管理を徹底して、無駄な材料費がないか確認するのはもちろん、広告を出しても効果がないものはやめてしまうなど、経費を抑える努力を怠らないようにしてください。
このように美容室のお金の流れを知るためにキャッシュフローを知っておくことは、経営では重要なポイントのひとつです。
収益が伸びずに、自転車操業をしている美容室も少なくありません。
資金ショートをする原因にもなるので、数字を経営で活かして、売上を伸ばしていきましょう。
まとめ
独立をして美容室を開業する美容師の中には、プレイヤーとしての考えのまま、独立をしてしまった人は少なくありません。
経営を勉強しないで独立をしてしまうと、売上が安定せずに、ストレスばかり溜めこんでしまいます。
そんな失敗をしないためにも、独立前から経営を勉強し、財務状況などの数字を見ながら経営ができるようになっておいてください。
経営者の感覚が身に付けば、独立後も美容室を長く経営できるようになっているはずです。
少なくとも美容室は美容室のセンスだけで、経営が続けられない世界だと思っておきましょう。
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