美容室を開業する際、初期費用を抑えたいと考える方にとって「居抜き物件」は非常に魅力的な選択肢です。
しかし、居抜き物件にはメリットだけでなく、デメリットやリスクも存在します。
この記事では、居抜き物件を利用して美容室を開業する際に押さえておきたいポイントや注意点、費用相場について詳しく解説し、美容師オーナーとして成功するための実践的なアドバイスを提供します。
監修者

西脇 敬久
株式会社DAM代表取締役。MBA、公認会計士、税理士の資格を所有。美容業界に特化した公認会計士として、美容院の顧客を多数抱える。美容院経営で必要な数字を明確にし、”誰でもわかる会計の見える化”で18%の利益率を目指す。美容院の会計に特化したセミナー講師としても活動中。
当社は美容業界に特化した会計サービスを提供。数字を活用し、人材流出を防ぎながら、18%の利益率を目指す経営支援を行います。会計業務にとどまらず、経営改善やスタッフ定着率向上のアドバイスを通じて、美容室経営の安定と成長をトータルサポートいたします。
居抜き物件とは? スケルトン物件との違いを理解しよう
- 居抜き物件・・・前のテナントが使用していた内装や設備をそのまま引き継ぐ形で契約する物件
- スケルトン物件・・・床・壁・天井・内装などが何もない空間のみの物件
居抜き物件とは、前のテナントが使用していた内装や設備をそのまま引き継ぐ形で契約する物件です。
これにより、美容室の開業に必要なシャンプー台、スタイリングチェア、照明、エアコンなどの設備が既に揃っていることが多く、初期費用を抑えられるのが特徴です。
居抜き物件があるのはなんで?
居抜き物件が存在する背景には、いい理由と悪い理由があります。
それぞれの理由について解説していきます。
いい理由|事業拡大による移転
まず一つ目の理由は、事業が順調に進展し、手狭になったり、より良い立地に移転する必要が生じた場合です。
この場合、前のテナントは成功を収めていたため、より大きな店舗や条件の良い場所へ移ることを決断し、その結果として居抜き物件が生まれることがあります。

事業拡大の場合は、いい理由のため使えるところが多いかもしれません!
悪い理由|経営の悪化による撤退
もう一つの理由は、経営の問題です。
全国に25万軒以上存在する美容室の競争は激化しており、集客が困難であったり、リピーターが定着しなかったりすることで、経営が厳しくなり、最終的に店を閉めざるを得なくなるケースも少なくありません。
その結果、店舗が閉鎖され、居抜き物件として市場に出回ることになります。



このような物件を選ぶ際には、何かしら経営がうまくいかなかった問題があるので慎重に確認する必要があります。
美容室を居抜きで開業するメリット・デメリットを解説
居抜き物件のメリット
- 初期費用を抑えられる
- オープンまでの期間が短縮できる
居抜き物件は、次のようなメリットを2つあります。
初期費用を抑えられる
- スケルトン・・・1000〜1500万円
- 居抜き物件・・・0〜750万円
新規で内装や設備を揃える必要がないため、開業費用を大幅に削減できます。
例えば、通常1,000〜1,500万円かかる開業費用が、居抜き物件を利用することでその半分以下に抑えられるケースもあります。
どのくらいの工事が必要か?によっても費用は変わってきますが、設備や内装を変えずに営業できたら0円からスタートできます!
オープンまでの期間が短縮できる
設備や内装がすでに整っているため、大規模な工事が不要で、開業準備の時間を短縮できます。



看板などの必要最低限の準備だけでスタートができるのは魅力です!
居抜き物件のデメリット
- 内装や設備のカスタマイズがしにくい(自由度が低い)
- 設備の劣化や故障のリスク
- 前の店舗のイメージを引き継ぐ可能性がある
一方で、居抜き物件にはいくつかのデメリットやリスクもあります。
これらを理解し、事前に対策を講じることで、失敗を避けることができます。
内装や設備のカスタマイズがしにくい(自由度が低い)
居抜き物件では、既存の内装や設備をそのまま使用することが前提となるため、自分の理想の店舗デザインを実現する自由度が低くなります。
特に、店のコンセプトやターゲット層に合ったデザインにしたい場合、追加の解体や改装が必要になることもあります。



スケルトン物件に比べて自由度が低いので、独自性を打ち出したい場合は前の内装が邪魔になる可能性があります、、、
設備の劣化や故障のリスク
居抜き物件に残された設備が古く、使用に耐えない場合、修理や交換が必要になることがあります。
例えば、シャンプー台やエアコンが劣化していると、開業直後に高額な修理費用が発生することも考えられます。
事前に設備の状態をしっかりと確認し、必要であれば予算に修繕費を組み込むことが重要です。



解体や廃棄には高額のコストがかかることもあるため、物件の状態の確認はしっかり見てほしいです。
前の店舗のイメージを引き継ぐ可能性がある
同じ場所に美容室があるだけで前の店のイメージが新しい店舗にも影響を与えることがあります。
いいイメージでしたらいいですが、前の店舗が技術やサービスに対して低評価を受けていた場合はイメージを払拭するのは容易ではありません。



お客様からするとサロン名を覚えていない可能性も高いので、デメリットになるかもしれません。
居抜き物件契約時の重要な注意点
居抜き物件を契約する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを確認しておくことで、後から生じるトラブルを未然に防ぎ、スムーズに開業を進めることができます。
設備の状態を詳細にチェックする
居抜き物件では、既存の設備をそのまま利用することが多いため、その設備が使用可能かどうかを事前に確認することが非常に重要です。
特にシャンプー台やエアコン、ボイラーなどの大型機器は、修理や交換が必要になる場合、予想外の費用がかかる可能性があります。
使用年数やメンテナンスの履歴も確認し、必要に応じて予算に修理・交換費用を組み込むようにしましょう。
前の店舗の閉店理由を把握する
前の美容室がなぜ閉店したのか、その理由を確認することは必須です。
経営不振が原因で閉店した場合、その立地や客層が美容室運営に適していない可能性も考えられます。
特に、評判が悪かった場合、新たな美容室でもその悪評を引き継ぐリスクがあります。
逆に、事業拡大や移転など前向きな理由での退去であれば、そのまま成功しやすい環境である可能性が高いです。



自分のサロンに全部が当てはまるわけではないですが、経営不振の場合は何かしらの問題があることがほとんどです。
立地条件を慎重に見極める
美容室の成功には立地条件が大きく影響します。
立地が集客に適しているか、アクセスの良さや周辺の競合状況をしっかりと確認しましょう。
特に、駅からの距離や駐車場の有無は、集客に大きく影響します。
さらに、周辺の競合店のメニューや価格設定もリサーチして、自分の店舗が差別化できるかどうかを考慮する必要があります。



お客様の通いやすさは美容室を選ぶ際の理由でもあるので見極めてほしいです!
作りたいコンセプトと合っているかの確認
自社で展開するコンセプトと居抜き物件の美容室が一致していることが重要
自分が作りたいお店の雰囲気やコンセプトに一致しないとお客様も美容師も居心地の悪さに繋がります。
例えば
- 男性ターゲットなのに、韓国のカフェをイメージしたパステルカラーの可愛い内装
- 50代女性がターゲットなのに、ぬいぐるみとかもふもふした原宿系の内装
どのようなお客様を集客したいのかによって、内装は変わります。



コンセプトはブランディングを考える上でも大切なので、妥協せずに選択しましょう!
造作譲渡契約の内容を確認する
造作譲渡契約とは?
店内内装(壁・床・天井・テーブル・椅子・厨房機器・調理器具など一式)をまるごと次の出店者へ譲り渡すこと
居抜き物件では、造作譲渡契約という形で前のテナントの設備や内装を引き継ぐことが一般的です。
この契約内容をしっかり確認しておかないと、後から「必要な設備が含まれていなかった」などのトラブルが発生する可能性があります。
譲渡される設備や内装について、詳細を契約書に記載し、双方の同意を得たうえで契約を進めることが大切です。



契約書はトラブルの原因にもつながりますので、しっかり確認が必要です。
居抜き物件を利用した美容室開業の成功例と失敗例
実際に居抜き物件を利用して美容室を開業したオーナーたちの成功例と失敗例を紹介し、これから開業を目指す方々にとっての学びとしましょう。
【美容室の居抜き物件の成功例】コスト削減で早期黒字化
ある美容師オーナーは、居抜き物件を利用して内装工事を最小限に抑えた結果、初期費用を大幅に削減することができました。
その分の資金を広告費やサービスの質向上に投入することで、開業からわずか半年で黒字化に成功しました。
このオーナーは、設備の状態を事前にしっかりと確認し、無駄な出費を避けたことが成功の要因となりました。
【美容室の居抜き物件の失敗例】設備の劣化により予想外の出費が発生
別のオーナーは、居抜き物件の設備が思ったよりも劣化していたため、開業後すぐに修理や交換が必要になりました。
その結果、初期費用を抑えるつもりが、逆に予算をオーバーしてしまい、経営が厳しくなったケースもあります。
設備の状態を甘く見ず、詳細なチェックを怠らないことがいかに重要かを示しています。
美容室の居抜き物件の探し方
理想の居抜き物件を見つけるためには、いくつかの方法を組み合わせて効率的に情報を収集することが大切です。
サロン向けの不動産サイトを活用する
美容室の居抜き情報に詳しいから相談しやすいのが特徴
居抜き美容室、オーナー、不動産屋の3者をまとめてくれます。
web上で手軽に物件を探せるため、現場に行かなくてもいいので、隙間時間にも容易に物件を見ることが出来ます。
どんな居抜き物件が出ているか?というのをエリア、価格帯などで調べることができるので勉強にもなります!
地域密着型の不動産会社に相談する
出店したいエリアが決まっている場合、地域に強い不動産会社に相談するのも非常に効果的です。
地域密着型の不動産会社は、地元のテナント情報を豊富に持っているだけでなく、その地域特有の客層や競合状況についても詳しいため、より的確なアドバイスが得られます。
また、ネットに出回らない「掘り出し物」の物件が紹介されることもあります!



ネットだけではわからないリアルな声が聞けるのが特徴です!
居抜き物件を探す際には、積極的に利用する価値があります。
まとめ
居抜き物件を利用して美容室を開業することは、初期費用を抑え、短期間でオープンできるという大きなメリットがあります。
しかし、その一方で、設備の状態や前の店舗の評判、立地条件など、慎重に確認すべきポイントも多く存在します。
この記事で紹介したメリットとデメリット、そして物件探しや契約時の注意点を参考にして、失敗しない物件選びを行いましょう。
しっかりとした準備を整え、自信を持って開業を進めることで、成功する美容室を築き上げることができるはずです。
美容師オーナーとしての夢を実現するために、これらのポイントを押さえて、最高のスタートを切りましょう。
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