美容室開業に欠かせない保健所立入検査とは?消毒セットなど必要なものや手続きについても解説

美容室の保健所立入検査って何を準備すればいいの?

もし検査に落ちたらどうなるの?

美容室を開業する際には多くの準備が必要ですが、特に重要なのが「保健所立入検査」です。

この検査は、美容室が法的に適切な運営環境を備えているかを確認するために行われます。

この記事では、保健所立入検査の目的や流れ、基準について詳しく解説します。

この記事でわかること
  • 保健所立入検査の詳細と入る理由について
  • 美容室開設時の手続きと必要書類について
  • 立入検査の申請手順と費用

監修者

会計士
西脇 敬久

株式会社DAM代表取締役。MBA、公認会計士、税理士の資格を所有。美容業界に特化した公認会計士として、美容院の顧客を多数抱える。美容院経営で必要な数字を明確にし、”誰でもわかる会計の見える化”で18%の利益率を目指す。美容院の会計に特化したセミナー講師としても活動中。

当社は美容業界に特化した会計サービスを提供。数字を活用し、人材流出を防ぎながら、18%の利益率を目指す経営支援を行います。会計業務にとどまらず、経営改善やスタッフ定着率向上のアドバイスを通じて、美容室経営の安定と成長をトータルサポートいたします。

目次

美容室の保健所立入検査とは一体なに?

保健所立入検査は、美容室の開業時に提出する「美容所開設届」や関連書類に基づいて、実際の店舗が衛生面や設備面で法的基準を満たしているかを確認する検査です。

管轄する保健所の職員が美容室を訪問し、申請内容が現場に反映されているかを確認します。

通常、開設届を提出すると保健所から立入検査の日程が通知され、その指定された日に検査が実施されます。

検査が無事に通過すれば、正式に営業を開始することができます。

また、営業開始後も不定期に立入検査が行われることがあるため、衛生管理を常に徹底する必要があります。

美容室の保健所立入検査が必要な理由

美容室では、お客様の頭髪や肌に直接触れる作業を行うため、衛生状態が非常に重要です。

そのため、衛生管理が法律で厳しく規定されており、これを遵守しているかどうかを確認するために保健所立入検査が実施されます。

保健所立入検査は、美容室が適切な衛生管理を行い、安全で清潔なサービスを提供できる環境であるかを確認するために必要です。

基準を満たさない場合、営業停止などの処分を受けることもあるため、事前の準備が非常に重要です。

美容室・サロンを検査する際の保健所の立入検査費用

検査手数料は、管轄する保健所によって異なるが、相場は2万円前後

立入検査に必要な検査手数料は保健所の開設届を提出する際に支払います。

一般的に数万円程度ですが、保健所によって金額が異なります。

事前に管轄の保健所ホームページから確認しましょう。

美容室開設時の保健所の手続きに必要な書類

  • 美容所開設届
  • 従業者名簿
  • 美容師免許
  • 医師の診断書
  • 構造設備の概要と施設の平面図
  • 管理美容師の講習会修了証書
  • 登記事項証明書(法人)
  • 住民票の写し(開設者が外国人の場合)

保健所の立入検査を受けるため、本人と、従業員がいる場合は従業員の美容師免許の原本や医師の診断書を持って保健所へ行き必要書類に記入しなければなりません。

サジキ

提出が必要な書類が多いから、忘れないように準備してください!

保健所立入検査でチェックされるポイント

  • 床と腰板・・・床や壁の下部に設置された板の構造が適切か確認されます
  • 待合スペース・・・お客様が待機するスペースの有無とその配置がチェックされます
  • 美容椅子の台数と作業室の床面積・・・美容椅子の数と作業スペースの広さが適切に設計されているか確認されます
  • 採光と照明、換気・・・十分な光と照明が確保され、適切な換気が行えるかがチェックされます
  • 洗浄と消毒済み布片収納棚・・・使用後のタオルなどを衛生的に保管する設備があるか確認されます
  • 消毒設備・・・美容器材などを消毒するための設備が適切に設置されているか確認されます
  • 未洗浄布片入れ・・・未使用のタオルや布片を保管するための場所があるか確認されます
  • 毛髪箱と汚物箱・・・髪の毛やゴミを適切に処理するための設備があるかチェックされます

保健所立入検査では、美容室が法的基準を満たしているか、上記のポイントに分けて詳細にチェックされます。

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これらのチェックポイントは、衛生管理を適切に行うための基礎となるもので、すべてクリアすることが求められます。

美容室開業時に必要な保健所立入検査の規定・基準で押さえておきたい3つのポイント

保健所立入検査の具体的な基準についても知っておくことが大切です。

以下に主な基準を3つ紹介します。

  • 消毒用の流し台と流水装置の設置・・・美容室には、手や器具を清潔に保つための流水装置が必要です
  • 待合スペースと作業室の明確な区別・・・お客様の待機スペースと施術を行う作業室は、はっきりと分けられていなければなりません
  • 作業室の面積に応じた席数の設定・・・作業室の面積に見合った椅子の数が適切に配置されているかがチェックされます

これらの基準をクリアすることが、美容室として安全に営業を行うための最低条件となります。

消毒用の流し台と流水装置の設置

美容室では、流水装置の設置が義務付けられています。

美容室では、シャンプー台に加えて、従業員が手を洗ったり、使用した器具を洗浄したりするための流水装置が不可欠です。

この装置は衛生管理の基盤であるだけでなく、作業の効率性にも直結します。

そのため、洗い場の配置は設計段階で慎重に検討する必要があります。

適切な場所に流水装置を設置することで、業務の流れがスムーズになり、衛生的な環境を維持することが可能になります。

待合スペースと作業室の明確な区別

美容業務を行うための作業室は、最低でも13㎡の床面積が必要とされています。

この広さでは、最大6台の作業椅子を配置することが可能で、以降、椅子が1台増えるごとに追加で3㎡の面積が求められます。

ここでの作業椅子には、セット椅子だけでなく、シャンプー椅子、コールド待ち椅子、美顔椅子も含まれます。

さらに、シャンプールームやスパ室などの個室を設置する場合、それぞれ独立して13㎡の面積が必要となります。

作業室の面積計算は有効面積(内寸)で行われ、玄関、お手洗い、待合スペース、バックルーム、消毒室など、美容業務に直接関係しない部分は除外されます。

そのため、機能的な美容室を設計する際は、少なくとも7坪以上の広さを確保することが望ましいでしょう。

作業スペースが限られていると、同時に作業できる人数が制限され、後々のトラブルの原因となりかねません。

店舗選びの段階から、設置したいセット面の数を床面積に基づいて検討することをおすすめします。

特に10坪以下の空間では、美容業務に関連する複数の個室を設けるのは難しいため、レイアウトを工夫し、視線の導線を最適化することが求められます。

作業室の面積に応じた席数の設定

美容室には、必ず待合スペースを設ける必要があります。

保健所の規定では、作業室には施術中のお客様以外は立ち入らせず、作業を待つお客様は待合スペースで待機するよう指導されています。

待合スペースは、店舗の入り口近くに配置し、作業室を通過しないような場所に設置することが求められます。

また、待合スペースと作業室は、つい立などで明確に区分されている必要があります。

可動式のカーテンや観葉植物での仕切りは十分とみなされず、場合によっては再検査が必要になる可能性がありますので注意が必要です。

確認してほしい基準一覧

構造設備基準

構造設備基準は、美容室が衛生的に運営されるための基礎となるもので、物件選びの段階から注意が必要です。

以下は主な基準項目です。

  • 作業室面積・・・有効面積が13㎡以上確保されていることが求められます。受付やレジなど施術に直接関係のないスペースは含まれません
  • 客待ち場所・・・つい立などを使って、作業室と待合スペースが明確に区別されている必要があります
  • 椅子の数・・・13㎡の作業室に対して、美容椅子は6席までが基準となり、それ以上を設置する場合は1席ごとに3㎡の追加スペースが必要です
  • 床・腰板・・・不浸透性の材質が使われていることが求められます。これにより、清掃がしやすく、衛生を保ちやすい構造になっていることが求められます
  • 洗場・・・流水装置が設置されており、手指や器材を洗浄するための設備が必要です。これらの設備は上下水道に直結している必要があります
  • 洗髪器・・・髪の洗浄に使用される洗髪器があり、これも上下水道に直結していることが求められます
  • 消毒設備・・・使用した器具を適切に消毒するための設備が設置されていることが必要です
  • 採光・照明・・・作業が安全に行えるよう、100ルクス以上の明るさが確保されていることが求められます
  • 換気・・・室内の空気が5000ppm以下の状態に保たれるよう、適切な換気設備が必要です
  • 便所・・・トイレには専用の手洗い場や石鹸などが用意されている必要があります

設備面の基準

保健所立入検査では、美容室が衛生的に運営されているかどうかを確認するための設備が適切に設置されているかが重要視されます。

具体的な設備の基準には、以下が含まれます。

  • 流水装置・・・手や器具を清潔に保つための流水装置が設置されていることが必須です。洗髪器や手洗い場は、上下水道に直結した設備でなければなりません。
  • 消毒設備・・・使用する器具や道具を適切に消毒するための設備が必要です。消毒液を適切に保管し、消毒作業が効率的に行える環境を整えておくことが求められます。
  • 換気と照明・・・作業環境が快適で安全に保たれるよう、適切な換気設備が整っていることが重要です。照明も十分な明るさ(100ルクス以上)が確保されていることが求められます。

消毒器具の基準

美容室では、お客様に直接触れる器具が多く使用されるため、これらの器具を適切に消毒・保管するための基準も厳しく定められています。

  • 消毒用器具・・・メスシリンダーや消毒用バットなどの器具は、消毒薬剤を使用して適切に管理されていることが必要です。消毒薬剤としては、エタノールや逆性石鹸、次亜塩素酸ナトリウムなどが使用されます。
  • 消毒済みと使用済みの器具の区分・・・消毒済みの器具と、使用済みの器具が混在しないように、格納容器を使って分けて保管することが求められます。これにより、清潔な器具を常に使用できる環境を維持します。
  • 汚物箱・汚髪箱・・・使用済みのタオルや髪の毛などを衛生的に処理するため、蓋付きの汚物箱や汚髪箱が設置されていることが必要です。

これらの基準をしっかりとクリアすることで、美容室の保健所立入検査を無事に通過し、安全で衛生的な営業を開始することができます。

美容室を開業する際に保健所の検査で救急箱の中身は何を入れればいいか?

  • 絆創膏(様々なサイズ)
  • 消毒液(エタノールなど)
  • ガーゼや包帯
  • ハサミとピンセット
  • 使い捨て手袋
  • 傷テープ
  • 綿棒

これらを備えておくことで、万が一の怪我や緊急事態に迅速に対応できる体制が整います。

保健所立入検査の申請手順

  • 事前相談
  • 開設届の提出
  • 保健所立入検査の実施
  • 確認済書の受領と営業開始

美容室開業に向けて保健所立入検査を受けるためには、事前の準備と適切な手続きが必要です。

以下に、申請手順をまとめました。

保健所立入検査の申請手順

STEP
事前相談

開業予定の美容室が保健所の基準を満たしているかどうかを、事前に確認するための相談を行います。

この段階では、施設の平面図などを持参し、美容室として適切な構造かどうかを保健所にチェックしてもらいます。

STEP
開設届の提出

美容室が基準を満たしていることが確認できたら、正式に「美容所開設届」を提出します。

これには、検査手数料の納付も含まれます。提出のタイミングは、検査予定日の1週間前までに行うのが一般的です。

STEP
保健所立入検査の実施

提出が完了すると、保健所から立入検査の日程が通知されます。

その日に保健所の職員が美容室を訪れ、設備や衛生管理が基準を満たしているかを検査します。

オーナーはこの検査に立ち会い、必要に応じて説明や対応を行うことが求められます。

STEP
確認済書の受領と営業開始

検査が無事に終了し、美容室がすべての基準をクリアしていると判断されれば、保健所から「確認済書」が発行されます。

この書類を受け取った後、正式に美容室の営業を開始することができます。

保健所立入検査に合格するためのポイント

保健所立入検査に合格し、美容室をスムーズに開業するためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

設備の確認と準備

美容室の設備が基準を満たしているか、事前に十分に確認しておきましょう。

特に、消毒設備や洗髪器、換気装置などの設置状況は入念にチェックし、必要があれば早めに整備しておくことが求められます。

物件選びの段階での確認

物件を契約する前に、その施設が美容室として使用できるかを確認することが重要です。

建物の構造や設備が美容室の基準に適しているかをしっかりと見極め、後から大きな変更を加える必要がないように準備を進めましょう。

美容室を開業するときに保健所立入検査を受けない、行わないときのリスク

美容室の運営には法律が絡んでおり、その中でも特に重要なのが「美容師法」です。

この法律の第11条および第12条には、美容室を開業する際に保健所の検査を受け、基準を満たしていなければ営業してはならないと明記されています。

第11条

美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、第十二条の三第一項に規定する管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。

第12条

美容所の開設者は、その美容所の構造設備について都道府県知事の検査を受け、その構造設備が第十三条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ、当該美容所を使用してはならない。

もし保健所立入検査を受けずに営業を開始した場合、違法営業とみなされ罰則が科される可能性があります。

サジキ

最悪の場合、営業停止処分を受けることもあるため、開業前にしっかりと準備を整えておくことが重要です。

まとめ 美容室開業には欠かせない保健所立入検査

美容室を開業する際に必要な保健所立入検査は、お客様に安全で清潔なサービスを提供するための重要なステップです。

この記事で紹介した流れや基準をしっかり理解し、事前に万全の準備を整えることで、スムーズに開業までのプロセスを進めることができます。

保健所立入検査に合格することで、美容室の信頼性を高め、お客様に安心して利用してもらえる環境を整えることができます。

開業に向けて、しっかりと準備を進めていきましょう。

美容所登録の際の環境づくりに関するよくある質問

美容室を開業する際には、保健所の立ち入り検査をクリアするためにさまざまな準備が必要です。

ここでは、開業準備中によく寄せられる質問とその回答をまとめましたので、参考にしてください。

消毒済みと未消毒のケースは1つのセット面に1つずつ用意すれば大丈夫ですか?エタノールと逆性石けんはどちらか1つでも良いのでしょうか?両方準備すべきですか?

消毒済みと未消毒のケースについては、全体で1セットあれば問題ありません。また、エタノールと逆性石けんのいずれか1つでも対応可能ですが、両方を用意することをおすすめします。保健所の検査員に対して、より万全な準備を示すことができ、安心感を与えることができます。

掃除用具は立ち会い検査後に準備しても大丈夫ですか?また、消毒用フタ付きバットには「消毒用」と表記する必要がありますか?

掃除用具そのものは保健所の立ち会い検査には直接関係ありませんが、汚物箱や毛髪箱は必須となります。髪の毛を掃くための箒やチリトリは、整備されていることが望ましいです。また、消毒用のバットに関しては、蓋に「消毒用」と明記する必要はありませんが、用途がわかるようにしておくと検査がスムーズに進みます。

保健所の審査において求められる消毒済みのハサミやブラシ、櫛を収納する棚は具体的にどのようなものが適しているのでしょうか?

消毒済みの器具を保管する棚や容器は、蓋付きのプラスチックまたはステンレスの容器で、ハサミやブラシがしっかり収まる大きさのものが適しています。また、埃が入らないように扉付きの収納棚を用意するのも良い選択です。これにより、清潔さを維持しながら器具を保管できます。

美容所登録の検査にかかる手数料はいくらになりますか?

美容所登録の検査手数料は、管轄する保健所によって異なります。相場は2万円前後となりますが、具体的な金額は、開業予定の地域の保健所に直接お問い合わせください。

営業を開始した後も、保健所の立ち入り検査は行われますか?

はい、営業を開始した後も、保健所による立ち入り検査は不定期に行われます。これらの検査は、美容室が継続的に適切な衛生基準を守っているかを確認するために実施されます。日常的に清掃や器具の消毒などの管理を徹底しておくことが大切です。

蓋付きゴミ箱や消毒済み用の収納ケース、タオル棚について、それぞれどのくらいの大きさのものを用意すれば良いですか?

蓋付きゴミ箱や消毒済み用収納ケースの大きさに関しては、特に厳密な規定はありません。ただし、タオル棚については、タオルが埃を避けて清潔に保管できるように設計されていることが条件です。必要な物をしっかり収納できる大きさを選びましょう。

タオルやクロスの消毒方法に規定はありますか?

タオルやクロスは、使用後に適切な方法で洗浄・消毒する必要があります。洗濯機での洗浄後、高温で乾燥させる方法や、次亜塩素酸ナトリウムを使った消毒が推奨されます。清潔に保つための管理を徹底し、保健所の検査に備えましょう。

美容室を開業する際、保健所の検査で救急箱が必要ですか? また、救急箱にはどのようなアイテムを入れておけば良いですか?

はい、美容室を開業する際には、保健所の検査で救急箱の設置が求められます。救急箱には、以下のようなアイテムを用意しておくと良いでしょう:

  • 絆創膏(様々なサイズ)
  • 消毒液(エタノールなど)
  • ガーゼや包帯
  • ハサミとピンセット
  • 使い捨て手袋
  • 傷テープ
  • 綿棒

これらを備えておくことで、万が一の怪我や緊急事態に迅速に対応できる体制が整います。

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